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東御市の山城跡「矢立城跡」で勉強会を開催!★祢津地域や和地域、上田市などの地元住民ら。

テーマ:とうみニュース

【堀切から見た高い土塁】
【修験道の修行に関連するとみられる祠(ほこら)】
【城跡内に咲いていたフデリンドウ】

 東御市和にある山城跡「矢立城跡」でこのほど、同市祢津地域や和地域、上田市などの地元住民らによる勉強会があった。

 上田広域山城連絡協議会に関連する勉強会として「祢津地域づくりの会」産業経済部会長の篠原博文さん、「上田地球を楽しむ会」代表の塚原吉政さん(小太郎さん)、城郭探訪家の森垣良広さん、「筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所」の田中健太准教授らが参加。

 目的は、あまり知られていない矢立城の研究、地域資源としての活用方法模索、発信や顕彰につなげることなど。
 この日は現地を歩き、各参加者が自身の分野の情報を提供。城跡の構造や地域の歴史、植物などについて学んだ。

 矢立城跡は和区の南東部に位置する。
 雑木がなければ上田平から丸子、佐久方面が見渡せる地点だ。
 同じく山城跡がある同市祢津の祢津城山とは、姫子沢集落をはさんで隣接している。

 歴史については、史料が少なくほとんど分かっていない。
 地元には海野氏の詰め城と伝わっているが、祢津氏関連の砦城という説もある。
 戦国末期、真田氏統治下で使われた可能性も十分にあるといい、上田小県地域のこのほかの山城と共通の歴史背景を有すると考えられる。

 城跡には、高い土塁や二重堀切など特徴的な遺構が残る。
 主郭は石積みのある土塁に囲まれており、後方背面の高さは10m近い。
 主郭の背後は大堀切で、さらにその奥も堀切という二重堀切の構造。
 大堀切の中などには巨石が累々としている。あわせて、主郭西や北には多くの曲輪の跡が存在。
 また、江戸時代以降は修権道の修行の場だったとみられ、5基の石祠と近代的な石垣などが残されている。

 問題点として、雑木が生い茂るなどして荒れており、城跡内の足元や眺望が良いとは言えない。
 進入経路はいくつかあるが、入口が分かりにくい。
 旧菅平有料道路の田沢信号付近に案内看板があるものの、その先には目立った案内がない。
さらに、クマが出没するとの情報があり、散策には注意が必要。

 一方で、人の手があまり入っていないことは良さの一つとも言える。また、森林化が進む中でも山城時代の草原性植物が、かろうじて残っており「フデリンドウ」といった可憐な花も見ることができる。

 矢立城に魅入られ、熱心に研究しているという塚原さんは「多くの山城を見学してきたが、その中でも魅力ある山城。進入経路の検討、案内標識設置や、修景間伐は必要。地元の希望があれば、整備などの応援をしたい」。
これまで約1200の山城を歩いてきたという森垣さんは「領土の境目の緊張感が感じられ、主郭の土塁や二重堀など迫力がある」と評価。

 篠原さんは、祢津や和地域の観光資源と一体的に活用を考えたいという。
 この地域には、祢津や和の複数のワイナリー、祢津城山、矢立城、児玉山古墳群、キャンプ場など複数の分野のスポットが点在。
 矢立城が整備されれば、和と祢津の境目にある史跡や歴史エリア活用が強化され、周囲への波及効果が期待できる。
 「歴史、ワイン、自然などさまざまな目的で訪れる人がいる。資源を一層つなげることができれば、より広いアピールになり、これまで以上に楽しんでもらえる。矢立城跡にはしっかりとした遺構が残っており、整備すれば良い観光資源となる。和地域づくりの会などと協力して取り組みを考えたい」と話している。