信州大学繊維学部発のベンチャー企業(株)ナフィアスが大学側と「フリートーク」!
テーマ:上田市ニュース


上田市の信州大学繊維学部発のベンチャー企業「㈱ナフィアス」=渡邊圭社長=が「信州大学繊維学部ファイバーイノベーション・インキュベーター(Fii)」に寄付を行った。
贈呈式の後、大学側とナフィアスでフリートークを行った。
大学からベンチャー企業を立ち上げる場合のポイントから、製品に対するデザインの重要性、上田地域が持つポテンシャルの高さが話題となった。
フリートークは、繊維学部で学んだナフィアスの渡邊社長と大澤道取締役、繊維学部の森川英明学部長と村上泰産学官連携室長が行った。
ナフィアスは、ナノファイバーテクノロジーを生かして2015年に設立し「高機能マスク」などを販売している。
★フリートークの主な内容は次の通り。
◆渡邊社長
大学発ベンチャー企業は、通常だと大学のシーズ(研究成果による技術などの種)だけで売るものがない段階から、技術をベースに夢を描いて、そこに投資を受け入れるしかないのですが、ナフィアスの場合は、フィルターやマスクをある程度作った段階からスタートし、投資を受け入れずにできたのが、始め方として大きなキーポイントになった。
◆村上室長
ベンチャー企業の生き残りは、お金が回せることが大切。
ナフィアスは、材料のベンチャーになるとは思うが、材料そのものを開発しているのではなく、材料をナノファイバーにするところに特化している。
強みを生かし、早くキャッシュリターンすることが重要。
すばらしい技術やものは、世の中にいくらでもあるが、それをベンチャーで挑戦すると、いつまでもお金が返ってこない。
いかに早く市場に出して、お金が返ってくることが大事。
ナフィアスの事業のBtoB(企業間の取り引き)は、早くお金が返ってくる。
市場に必要なものを提供できたので、ファーストステップをクリアされたと思う。
資金をベンチャーキャピタル等にあまり依存してしまうと、発言権がなくなり、やりたい事業ができない。
ベンチャーにはさまざまなタイプがあるが、ナフィアスのように自立してできるのは、成功している少ない例だと思う。
◆森川学部長
ナフィアスは非常に柔軟で、村上先生が言われたように、ベンチャーキャピタルが入ると、そこへリターンをしないといけない。その利益確保に奔走してしまうと、自分たちの思ったようにはできない。
ナフィアスは、あまり無理をしないで上手にできている。
大学とこれまで一緒に行う中で、大学に持ち込まれる案件をナフィアスに持ちかけたり、新しい研究を一緒に行っていたこともあった。
学術とスタートアップが一体的にできたのは、上田キャンパスの中にFiiがあって入居し、普段から顔を合わせてコミュニケーションができたことも大きいのではないか。
別の視点で、若手人材のキャッチが重要で、信州大学は今年度、文部科学省の地域活性化人材育成事業を活用し、長野県と長野大学、佐久大学なども入って、地域の人材を育成し、地域産業の活性化を大学連携で行う。
地域の産業振興、地域の人材のため、大学が高度な人材を育成し、地元企業への就職や、スタートアップするのも大切だと思う。
もう1点は、博士課程の人材育成で「次世代研究者挑戦的研究プログラム」に採択されていて、研究に対する支援、社会を俯瞰的に見たり、スタートアップに必要な知識やスキルを身につけるプログラムで、渡邊社長にも関わってもらっている。
研究だけの博士課程ではなく、社会や経済、産業を見ながら、自分たちの専門的な知識や技術をどう使うかにつなげる人材をつくることが大切。
ものづくりのラボを大学の中につくることを検討していて、大学での知識を使い、学生が自分でものをつくり、その中から面白いものができれば、スタートアップの契機になる。大学の教育に新たなスタイルを入れ、スタートアップ人材育成をしたい。
◆村上室長
文科省で今考えているのは文理融合。
日本では高校でも文系と理系に分かれている。
渡邊社長の成功にはもちろん技術的が必要だが、経営的な感覚も必要で、これからベンチャーを増やすには文理融合が不可欠。
それは、日本の教育そのものを変えないといけない。
技術と経営両方の詳しい先生はなかなかいない。
今は忙しいかもしれないが、将来的には2人に特任教授として教育にも関わってほしい。
◆大澤取締役
技術と経営の話しにはすごく共感できる。
私たちが大事にしたいと思っているのは、技術とデザインの融合。
素材ベンチャーとして素材だけでは戦えない、そこが日本企業の弱くなっている一つの理由ではないか。
その意味で、自社製品でパッケージを作るとき、デザイナーをしっかり入れたことから、大学発ベンチャーの製品としてすごく驚かれる。
最初から余計と思われるかもしれないが、デザインにお金をかけており、重要な要素、差別化できる要素だと思っている。
◆森川学部長
文理融合について、STEAM教育がある。
サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、アート、マスマティックス。元々全てのものは、分野が分けられているわけではなく、つながっている。大学や高校で専門知識として学ぶためには、細分化して専門化しないと進化しないこともあって分けられている。
それが強くなりすぎると、総合的だったものが、個別のものになり、それを学んだ人材も、その部分しか分からない。
しかし、融合しているため、戻さないといけない。
その考え方がSTEAM教育の考え方。信大繊維学部の繊維には、蚕、桑、生物、化学繊維、物理学、機械工学などさまざまな分野が入っている。
このキャンパスは100人弱の教員だが、人的には分野融合ができる状態にある。
繊維学部では、教員がもっとコミュニケーションしながら、新しい組み合わせができる仕掛けを進めている。
その中で、学生がSTEAM教育で専門だけでなく幅広く見られる視点を養えると、スタートアップや新しい産業創出につながると思う。
上田地域などでは、ものづくり産業が重要。
機械などが中心だが、材料が関係しているので、融合的にする場が必要だと思う。
企業の方、スタートアップの若手、大学の先生、学生、高校生、中学生などが交流できるコミュニティができると、その中から、新しい発想、新しいものづくりが出て、社会を牽引することも考えられる。
◆村上室長
デザインとの関係で、長野県ではものづくり企業が多いが、デザインにお金をかける余裕がないという場合が多い。
しかし、やはり3割ぐらいはデザインにお金をかけるべきといわれている。デザインがないとブランド価値が確立されず、安くしか売れなくなってしまう。
今までの常識を変えて行かないといけない。ナフィアスが同じように考えていることは、非常に将来性があると思う。
◆渡邊社長
素材やアカデミックに関わると、機能、性能に固執しがちだが、製品になると使う人がいる。
もちろん、性能や値段もあるが、使っていることで得られる喜び、よいデザインになるような商品をつくりたい。
◆村上室長
最初に機能があり、次ぎにデザインがあり、最終段階がストーリーといわれている。
ブランドの要素はその3つ。
今はブランドがストーリーの時代になっている。ナフィアスの起業からここまできたストーリーをブランド価値にしてほしい。
◆森川学部長
上田は良いところで(繊維学部で学んでから)残って何かやりたい学生が多い。
上田市もスタートアップを支援している。
東京からも距離的に近いし、自然も豊で、新しい発想が生まれやすい所。
学園都市として各大学などがうまく連携できれば、新しいものが出てくる地域だと思う。
そこに皆が集える場所があれば、企業の技術者と話しをしているうちに、ナノファイバーと組み合わせると新しいものができるなど、発想が生まれる。
接点がつくれる場があれば、上田の新たな産業が生まれるオープンなプラットホームになると思う。
Fiiもうまくオープンにして動けるようにしたい。