小諸の地で米店を営む「村松商店」店主に”移りゆく小諸の街”と”今後への思い”を聞く!
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利便性に焦点が集まりがちな都市のコンパクト化だが、小諸市独自の特色は、懐古園を中心とした文化財や歴史ある街並みとの共存を目指すところだ。
天保15(1844)年創業、明治時代より小諸の地で米店を営む「村松商店」店主に、移りゆく小諸の街と今後への思いを聞いた。
店主・村松丈徳さん(44)は同店7代目。小諸駅から徒歩5分ほどの場所。「農家から直接買い付けるので、小さいころから誰かしら店に来ていて、野菜やらなにやら持ってきてくれる。そういう付き合い方が好きだった」。だが大学進学で上京すると、長野新幹線が開通し地元は一変した。
先代の父・一男さんが亡くなったのは、大学4年生の時。新幹線で通学しながら家業を継いだ。久しぶりの故郷は「なんかガラーンとしたな」。駅前から大型店が次々に撤退。空き店舗が増え、周りの商店主からあちこちで「もうだめだ、小諸は」という声が聞こえた。「でも、なんでも新幹線のせいにするのは違うと思っていた」。
付き合いのあった農家が、新幹線沿いの田んぼを次々に売ってしまう。寂しさと、不安。苦境が続く中、自身も病と闘うことになる。大腸の難病で全摘出手術を受け、多くの合併症に苦しんだ。「頑張ろうとしているのに病気になっちゃって。はがゆさがあった」。どん底の小諸に自分が重なった。
ちょっと風向きが変わってきたと感じるのはここ5年くらいのこと。テレワークや田舎暮らしに、移住する人が増えてきた。近隣の大きな街ではなく、「古風な雰囲気がいい」と小諸を選んでくれるようになった。家業を継ぐUターン仲間も増えた。「魅力的な街ですよね、人がすごく良くて」と定住した人によく言われる。「外からの意見を聞くことで、小諸の人が自信を取り戻し、気持ちが一つになった気がする」。
若い頃は「基幹産業がない」と感じていた。けれど今は自信をもって言える。「小諸は、人が基幹。コツコツ勤勉で商売が好きな小諸商人の気骨こそが、商都・小諸の魅力」なんだと。闘病を乗り越え、一昨年には娘が誕生。「古さと新しさが共存する、美しい街を未来に残したい」。