長和町の黒沢勇人さんが「第26回 長塚節文学賞」で短編小説部門最高賞の「大賞」を受賞!
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長和町長久保の黒沢勇人さん(66)は「第26回 長塚節文学賞」で、短編小説部門最高賞の「大賞」を受賞した。
同賞は、茨城県常総市と「節のふるさと文化づくり協議会」が主催。
同文学賞では、自作未発表の短編小説、短歌、俳句を全国から公募。
テーマや内容は不問。
常総市出身の歌人・作家として知られる長塚節(ながつかたかし)を広く顕彰し「節のふるさと常総」の文化を全国に発信すること目的に毎年開催されている。
第26回同文学賞の短編小説部門に177編をはじめ3部門合計で11、396作品の応募があった。
昨年11月と12月に最終選考が行われ、短編小説部門では、大賞1作品、優秀賞2作品、佳作3作品、奨励賞3作品が決まった。
黒沢さんは、黒沢佳のペンネームで応募。
この文学賞には、今回で5回目の応募で、初入選ながら大賞受賞となった。
受賞作品は、東信州の小さな田舎町に移住した女性を主人公とした短編小説「棚田オルガン」。
主人公は、棚田に隣接する自然豊かな集落で暮らし、移動販売をしながら農業に勤しむ半農半X生活を送っている。
主人公の提案で町から払い下げを受けた古いオルガンが集会所に届く場面から物語が始まる。
そして、このオルガンや農村生活を取り巻く人間模様を軸とした日常が、移りゆく季節とともに描写されていく。
随所に、オルガン演奏の描写があり、あわせてその曲の歌詞が挿入されている。
加えて、農業談義も盛り込まれている。
講評では
「様々な歌の歌詞が盛り込まれ、独特な情緒を醸し出している」
「農業談義が作品に奥行きを与えている」
「自然描写も巧みで季節の移ろいを上手に表現」
「(登場人物の)農業に寄せる危惧と矜持の思いを棚田での農作業の日々に織り込んで巧みに描く」などと評価された。
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黒沢さんは元町職員で、現在はコメやアスパラガスなどを栽培する専業農家。
町役場は52歳で退職し親の介護を行うとともに、家業の農業も継いだ。
あわせて、東京農業大学が長和町で展開している「山村再生プロジェクト」の現地指導員としても活動。
小説は、退職数年後に雑誌に投稿したエッセーが入選したことがきっかけで書き始めた。
小説のジャンルは、社会運動的な側面を持つ農民文学。
日本農民文学会に所属し、文学を通じた農業農村復権を目指してペンを執ってきた。
2015年には日本農民文学会の「第58回農民文学賞」を受賞している。
長塚節文学賞大賞受賞後には、地元の仲間によるお祝いの集まりがあった。
黒沢さんは今回の受賞について「この文学賞は、様々な小説を募集している。商業的な側面が強くハイレベルな人が多い『都市小説』の応募がある中で、農民文学で受賞できたことは一矢報いたのではないか」。
今後の活動について「文学を通じて農村の維持や、農村を守る意識向上の啓発につながれば」と話した。