<職人> 能面 小池隆吉さん(74)=長和町長久保= 「わずかな違いで異なった表情に!」
テーマ:ひと

長久保で10年以上、能楽に使う仮面「能面」を打っている
※能面「打つ」とは制作の意味。
面は、ヒノキなどの木材を彫って作る。
面型(型紙)をもとに彫り進め、徐々に細かく形を整え、下処理をしてから、彩色を行い完成となる。
「同じ型紙を使っても、どこかがわずかに違うだけで、異なった表情になる。彩色も難しく、気に入らなくて塗り直すこともしばしば」と奥深さを語る。
主に女面を手掛けてきたといい、可憐な若い女性の「小面(こおもて)」。
女性の怨念や悲しみなどを一つの面の中に表現した「般若」。
節のある木を使い品格が高く哀愁をおびた美しさの「節木増(ふしぎぞう)」ーなどを仕上げてきた。
完成品は、長久保宿に開いた私設資料館「吾一庵」に並べている。
一見すると無表情だが、見る角度や明かりの方向などによって表情が変化する、女面の魅力を伝えている。
打ち始めたきっかけは、地元団体の「うしこが会」。
同会は、彫刻や七宝などの制作活動を行っていた長久保の故・櫻井義友さんが呼び掛けて発足。
目的は、地元の子ども獅子の獅子頭や面の修復だった。
現在は小池さんが代表となり、能面打ちなどの定期活動を続けている。
町の文化祭などで作品を展示することがあるという。
小池さんは能面のほか、人物などの木彫作品や、花立てなどの木工製品も作っている。
「無我夢中になり、時間を忘れて掘っている。これからも続けたい」と話している。